2021年5月 5日 (水)

The Look of Love(1998年頃カナダのCMより)

ずっと探していた曲があった。1998、1999年にカナダのテレビ・コマーシャルで流れていた歌。そのCMの商品は忘れてしまったんだけど、女性が歌うメロディは、ふとした瞬間に、いつも思い出してしまうのだった。

そのCMの内容は、薄暗い部屋で若い夫婦がテレビを見ている。だらしなくソファに寝そべってスナックをむさぼる夫にうんざりしながら、その妻が”何かの商品”を開封した瞬間、だらしなかった夫のお腹がひっこんでいき、スマートでハンサムな青年に変化したのだ!夢のような時間を過ごしていた妻だったが、夫のゲップで現実に戻されるというストーリー。

・・・その後、カナダを去った後も忘れたことはなかった。それから二十年近くが過ぎ、ある日、偶然にも見つけたのだ。同じくずっと探していた東京スカパラダイスオーケストラのCD「gifted」の中にインストゥルメンタルで見つけたのだ!

「The look of love」原曲は、1968年の映画「007」シリーズの主題歌で、Dusty Springfield(ダスティ・スプリングフィールド)。

あの胸が締め付けられるような甘く切ない感じはクセになる。この曲も様々な歌手がカバーしていて、1990年代では、映画「オースティン・パワーズ」のサントラ盤のSusanna Hoffs(スザンナ・ホフス)のギター弾き語りはさわやか。それから、2000年代では、カナダのDiana Krall(ダイアナ・クラール)のは、セクシーでタフな印象。

さかのぼって、Sergio Mendes & Brasil 66(セルジオ・メンデス&ブラジル'66)のボサノヴァ風も味があって、レトロな「ザ・歌謡曲」の豪華さの中にも原曲の切ない感じは残っていて好きだ。

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2021年3月 7日 (日)

だみ声のトム・ウェイツはシブい

北米で人気のトーク番組デイビッド・レターマンのレイトショーを見ていたとき、だみ声の男の歌手が拡声器で歌っていた。

それが、トム・ウェイツ(Tom Waits)だった。

気味が悪いんだけど、妙に惹かれてしまった自分は、翌日、ダウンタウンのCDショップに並んでいた彼のCDを買ったのだった。Mule Variations(ミュール・ヴァリエイションズ)1999

その曲と歌声は、かつては普通の活気があった町。今は住民たちが去っていった田舎の裏さびれた風景。廃墟に吹く風の音・・・そんな悲哀を感じさせる。個人的には「Georgia Lee」の悲しい事件に対して、神に疑問を投げかける”やりきれなさ”が記憶に残っている。

ただ、皮肉や寂しい曲の合間に、胸をジーンとさせる曲もあって、それもいいのだ。

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2019年2月 3日 (日)

メビウス『アルザック』

メビウス(Moebius)とは、フランス人作家ジャン・ジロー(Jean Giraud)の漫画家名である。
彼の作品は、世界中の漫画家やクリエイターたちに影響を与えている。その名前の由来は、子供のころ読んだ”メビウスの輪”を題材にしたSF作品からと言われる。

メビウス氏の代表作ともいえる「アルザック(Arzach)」シリーズは、サイレント映画のような静かな映像の中に存在する近未来的な世界観は、僕ら人類の記憶の奥底にも触れてくるような、なんとも、奇妙で不思議な印象を与える。

もちろん、日本アニメーションの巨匠たちにもリスペクトされていて、たとえば、宮崎駿さんの「風の谷のナウシカ」にも、それが色濃く反映されている。

たとえば、世界を放浪する無口な戦士アルザックは、ナウシカの師匠ユパの生き方にも通じているし、プテラノドンのような鳥に乗るアルザックは、メーヴェを操縦するナウシカに重なる。

あと、登場するキャラクターたちも不思議で、「スペースコブラ」や「スターウォーズ」なんかに登場するような、ちょっとグロテスクな形状がおもしろい。

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2018年2月18日 (日)

マイケル・ジャクソン「スリラー」

スーパースターと聞いて、まず思い出すのは、マイケル・ジャクソンだろう。たくさんの名曲を残したが、マイケルが歌いながら踊るダンスのスピードは、すごすぎて失神しそうになるほどだ。

僕らが小学2、3年の頃にブレイクダンスが流行っていたのだが、当時、上級生たちがやっていた「ムーン・ウォーク」を見たときは、びっくりした。どう見ても、後ろに進んでいるのだ・・・。砂だらけの校庭でやってもらって、そんなだったので、本物のムーンウォークは、完璧すぎて不思議にさえ見えなかった。

さて、名曲の中でも、印象に残っているのは「スリラー」だ。ゾンビたちのダンスは、とてもコミカルに思えるが、実際のプロモーションビデオは、かなり不気味で迫力があった。ゾンビダンスでは、左右に振った両手を一方に挙げたまま横に進む動きが有名だけど、集団の前の列と後ろの列が左右を逆に行進するシーンは心を揺さぶられる。

ちなみに、「ひょうきんベストテン」で登場したウガンダさんの”偽マイケルジャクソン”は、カレーを食べて怪物に変身するのであるが、あの巨体で踊るキレのあるダンスは、意外にもカッコよかった。

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2015年3月16日 (月)

ジャニス・ジョプリン「サマータイム」

「サマータイム(Summertime)」は、素敵な曲だ。アメリカの作曲家ガーシュウィンのオペラ「ポーギーとベス(Porgy and Bess)」の中で歌われる。ちなみに、ガーシュウィンの代表作「ラプソディー・イン・ブルー」は、以前に紹介した。

「ラプソディー・イン・ブルー」紹介記事

この「サマータイム」は、ジャズなどでもおなじみで、世界の様々な歌手たちに何度もカバーされてきたのだが、もっとも衝撃的だったのは、ジャニス・ジョプリン(Janis Joplin)の歌うサマータイムではなかったかと思うのだ。

あの酒やけしたしゃがれ声から絞り出されるメロディは、上手く表現できないのであるが、聴く者を一発で音楽世界に引きずり込む迫力があるのだ。

彼女たちが生きたのは、僕らの生まれるずっと前の時代だったけれど、現代の音楽にも色濃く影響を残している。そして、たった27年という短い生涯だったが、だからこそ美しいジャニスの魂の叫びは、今も世界中の心に響く。

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2015年2月24日 (火)

レディオヘッド『OKコンピューター』

イギリスのバンドRadiohead(レディオヘッド)を聴いたのは、僕がカナダのトロントに住んでいた頃だった。あたりまえのことだが、そこは洋楽だらけで、たくさんロックバンドも知ることができた。そんな中で、一般的な洋楽にはない独特の暗いメロディのレディオヘッドが珍しかった。

ヴォーカルのトム・ヨークは、歌い方にも雰囲気があって、目をつむりながら、ときどき、ゆっくりと片眼を開けてギターを眺める姿は、瞑想している禅僧のようなオーラが漂う。

個人的な思い出のアルバムは『OKコンピューター』。

とくに、「Paranoid Android(パラノイド・アンドロイド)」や「Karma Police(カーマ・ポリス)」は、暗くて、ねっとりと絡み付いてくるような歌が耳に残る。たとえば、エリック・サティ「グノシエンヌ」に似て、どんよりと憂鬱な感じがクセになるのだ。

灰色の曇り空の日に、どこからともなく聞こえてくる・・・。

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2014年5月 3日 (土)

ティアーズ・フォー・フィアーズ「シャウト」

その曲を初めて聞いたのは、自分が小学生だった80年代の半ばで、テレビドラマ(たぶん、木曜ドラマストリート)だったと記憶している。ぼんやりと青みがかった映像に、不思議な感じのメロディーがしっくりしていた。
それが、ティアーズ・フォー・フィアーズ(Tears for Fears)の唄う「シャウト(Shout)」だった。全体的にけだるくて、無機質な感じなのに、底の部分がまっすぐで熱い曲なのだ。
その少し奇妙なバンド名の由来が、心理学者アーサー・ヤノフ「原初からの叫び」から引用された言葉であるように、この曲「シャウト」も心の底から吐き出す叫びを表現している。
"Shout, shout, let it all out" 叫んで、叫んで、すべてを吐き出すんだ。
"These are the things I can do without" それだけ、やればいいのさ。
"Come on, I'm talking to you, come on" やってみろよ。君に言ってるんだぜ。
・・・大人になった今でさえ、ときには叫びだしたいこともある。でも、その叫びを飲み込んで、平穏な日常に戻っていく自分がいるのである。
ときには、叫びたいこともあるのだが・・・。

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2014年3月21日 (金)

ジグソー「スカイ・ハイ」

大空の映像が映されたときなど、たいてい聞き覚えのある歌・・・

そう、「スカイ・ハイ」だ!この歌は、1970年代イギリスのバンド・ジグソーによってリリースされた。

プロレスを観ていた人だったら、”千の顔を持つ男”ミル・マスカラスの入場曲としても、あまりにも有名である。

あの独特な前奏のあとに、

Blown Round By The Wind...

Thrown Down In a Spin...

と始まっていく、この曲は、とても広大で、男のロマンを駆り立ててくれるのだが、歌詞はラブソングと言えるだろう。でも、愛し合う恋人たちの愛が、昇華されて天空に昇っていく感じが、爽快でロマンにあふれている。

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2012年9月10日 (月)

空想英語読本

「バッタの改造人間」とは?

ヒント:ドラゴンボールのセルではない。

マンガの翻訳で大変なのは、日本人なら誰でも分かるニュアンスを具体的な言葉で表現しなければならないところだろう。

その辺を面白く、可笑しく紹介しているのが、マッシュー・ファーゴさんの「空想英語読本」である。

答えは、仮面ライダー。

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2012年7月31日 (火)

風の歌を聴け【英語文庫】

"Hear the wind sing"(翻訳 Alfred Birnbaum)は、

村上春樹さんのデビュー作「風の歌を聴け」の英語翻訳版である。

英語に翻訳されたものが、あまり違和感を感じないのは、もともとの日本語の文章によるところが多いと思う。たしか、村上さんは、最初に英文で書いてから文章を和訳する・・・みたいなことを語っていた気がする。

この作品の中核である、有名なこの文章から始まる。

“There's no such thing as perfect writing, just like there's no such thing as perfect despair.”

「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」

ほかにも作品のいたるところに、こじゃれた表現があって、あまり考え事をしたくないときなどに読むとリラックスできる。

the dreams of her seventy-nine years quietly dispersed like a passing summer shower on a shopping street, leaving not a   thing behind.

「彼女が79年間抱き続けた夢は まるで舗道に落ちた夏の通り雨のように静かに消え去り、後には何ひとつ残らなかった。」

, I could make out freighters floating grimly offshore.

「沖に貨物船がうんざりしたように浮かんでいるのが見えた。」

【関連記事】名言集「文明とは伝達である」

全体の文章は、まさにそよ風のように軽い感じで、何度読んでも楽しめる詩集のようである。とくに、あの学生時代の退屈な帰省を経験した人におすすめしたい。

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