浅草キッド
「浅草キッド」 ビートたけし
お前と会った仲見世の 煮込みしかない鯨屋で
夢を語ったチューハイの 泡にはじけた約束は
明かりの消えた浅草の こたつひとつのアパートで
同じ背広を初めて買って 同じ形の蝶タイつくり
同じ靴まで買う金は無く いつも笑いのネタにした
いつか売れると信じてた 客が二人の演芸場で
夢を託した百円の 投げて真面目に拝んでる
顔に浮んだ幼子の 無垢な心にまた惚れて
一人訪ねたアパートで グラス傾け懐かしむ
そんな時代もあったねと 笑う背中が揺れている
夢は捨てたと言わないで 他に当てなき二人なのに
夢は捨てたといわないで 他に道なき二人なのに
大学を中退したたけしの浅草フランス座で芸人修行をした青春の日々。同じ夢を見る個性的な仲間たちと繰り広げる笑いと哀愁に満ちた生活。文庫版の解説は、井上ひさし。なお小説の冒頭で始まる上の詩は、ビートたけしの歌でCDも出ている。
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